JC17 島本石材工業 [庵治石] ×レオン・ランズメイヤー
“Stone Tools”
銘石たる価値を
最大限に生かす
香川県の牟礼町と庵治町にまたがる五剣山で産出される庵治石。キメの細かさ、優美な光沢、水晶ほどの硬度、風化や変色に強い質、山が険しく採りにくい上に石の目を揃えるのも難しいという希少性など、「花崗岩のダイヤ」と称される銘石たる価値がつまっている。黒雲母が緻密に集まってできている「斑(フ)」と呼ばれるまだら模様は世界の石の中でも類がなく、その魅力を引き立てる。
その石質の素晴らしさは、石工たちの技も育んだ。硬い石を加工する技術はもちろん、キズやかさねを的確に判断し、揃った石目を見定める目が求められる。彫刻家のイサム・ノグチが庵治石と石工たちの技に魅せられ、牟礼町にアトリエを構えたことも知られている。
庵治石製品で主流の墓石の製作を主に手がける島本石材工業は創業1919年。熟練の技と目に加え、独特な艶と表情を与える砥石研磨仕上げにこだわっている。
ニューヨークを拠点とするレオン・ランズメイヤーは、自らプロトタイプを作り体験しながら、ディテールを徹底的に検証するデザイナー。確かな実用性をともなう造形力が、ハーマンミラーやヘイなどで彼が手がけた製品に表れている。
庵治石がレオンのデザインプロセスに乗ることで、そのの特徴が新しいかたちで発揮されるだろうというのが、今回のプロジェクトへの期待だった。
レオンは、庵治石に日用品としての用途を与えて、その美しさを生活の風景に取り込もうと考えた。硬くて丈夫という庵治石の特徴を最大限に生かす用途として彼が提案したのは、キッチンツール。ナッツクラッカー、麺棒、スパイスグラインダー、それぞれの用途に合った個性的なフォルムは、角度によって変わる石の模様も捉えている。一点ずつ職人の手作業で仕上げられる、オブジェのような佇まいのキッチンツールが誕生した。
庵治石の壮大な石切り場。
「花崗岩のダイヤ」と称される。
直径1m以上あるダイヤモンドブレード。
石を切っていく
庵治石は墓石製作に使用されるのが主流。
切り出した石を磨くグラインダー。
職人の目と手の感覚で磨き具合を見極める。
磨きの説明を受けるランズメイヤー氏。
島本石材工業Shimamoto Sekizai
創業1919年。庵治石製品で主流の墓石の製作を主に手がける。熟練の技と目に加え、独特な艶と表情を与える砥石研磨仕上げにこだわっている。福岡県太宰府市にある竈門神社のためにジャスパー・モリソンがデザインした椅子の製作を手がけた。
レオン・ランズメイヤーLeon Ransmeier
2008年、ニューヨークを拠点にRansmeier Inc.を設立。確かな実用性をともなう造形力が、Herman MillerやMattiazzi、HAYなどで手がけた製品に表れている。