JC16 能作 [錫] ×クラーソン・コイヴィスト・ルーネ
“TSUBAKI”
素材の魅力を凝縮し存在感を放つテーブルウェア
慶長16年に加賀藩主の前田利長が鋳物師を呼び寄せたことがその起源とされる富山県高岡市の高岡銅器。高岡での長い歴史の中で培われてきた技術が、銅像や梵鐘など大型の鋳物から、仏具、茶道具、花器など日本の伝統習慣に欠かせない道具づくりまで幅広く支えてきた。その高岡の鋳造技術を受け継ぎながら、生活文化の変化やユーザーからの声をキャッチし、従来の鋳物のニーズを超え生活のさまざまなシーンに送り込めるプロダクトの開発に積極的に取り組んでいる能作。技術と素材の使い分け、職人の手仕事と機械加工の両立、企画から製造までの一貫体制など、自社で築いてきた環境を生かして、鋳物メーカーとしての可能性を飛躍的に広げてきている同社は、日本の伝統産業が開拓できる未来を示唆するマニュファクチュアのひとつである。
来日経験も豊富なスウェーデンの建築・デザイン事務所、クラーソン・コイヴィスト・ルーネが今回のプロジェクトに参加。彼らは結成から約20年以来、数々の名だたるメーカーにデザインを提供しており、そのデザインの独自性と質の高さの安定感は確固たるもの。
メンバーを代表して能作の工場を訪問したエーロ・コイヴィストは、能作が使用する素材の中で錫を選び、温かみのある光沢と使い込んだときに現れてくる古艶、そして工場の片隅で手にした材料の段階の錫の「重さ」にも着目。
空間に置かれたときに目が感じる存在感と使用するときに手が感じる存在感を両立しながら繊細さも兼ね備え、6枚を重ねると花のように見えるテーブルウェア”TSUBAKI”を発想するに至った。
株式会社 能作 NOUSAKU
1916年の創業以来、仏具や茶道具、花器の製造を中心に行い、近年は、テーブルウェアやインテリア雑貨などの製造や、建築やアート、ファッション、医療機器など新領域からのリクエストにも対応するなど、素材と技術とデザインをキーワードに、新しいものづくりに積極的に挑戦し、その可能性を広げている。先人により培われた鋳造、仕上げ、着色の技術に敬意を払いながら、新たな伝統の創造を目指す姿勢から生み出されるさまざまなプロダクトは国内外で注目され、信頼も得ている。
クラーソン・コイヴィスト・ルーネClaesson Koivisto Rune
1995年にストックホルムにて、モーテン・クラーソン(Mårten Claesson)、エーロ・コイヴィスト(Eero Koivisto)、オーラ・ルーネ(Ola Rune)により結成。建築事務所としてスタートしてから建築とデザインに等しく重きをおく複合的な活動を展開し、国際的に評価されている。世界中の80以上の企業にデザイン提供しており、受賞も60以上にのぼる。
R&D 倉本 仁Jin Kuramoto
プロダクトデザイナー。1976年兵庫県生まれ。金沢美術工芸大学を卒業後、家電メーカー勤務を経て、2008年 JIN KURAMOTO STUDIOを設立。物事を明快な造形表現で伝えるアプローチで家電製品や家具、照明機器、日用品等の様々なプロダクトデザイン開発に携わるほか、企業や地場産業のデザインコンサルティングにも実績があり、商品企画/デザイン開発など総合的な開発サポートを行なっている。