JC12 三洋 [ソフトPVC] × エマニュエル・ムホー
“awa”
PVCとは思えない美しい色合いを実現
風に揺れるこの作品は、見る角度によってさまざまな色のグラデーションを生み出す。また、作品を透かした光は空間をカラフルに演出する。エマニュエル・ムホーと三洋がタッグを組んだ 「AWA」である。
一見すると、何の素材だかわからないが、これは三洋と開発したソフトPVC素材を用いた作品だ。
PVCとは、ポリ塩化ビニル。合成樹脂のひとつで塩化ビニルを重合したものであり、ソフトPVCとは、軟質ポリ塩化ビニルのことを指す。三洋は塩化ビニルや合成樹脂の加工に長年携わってきた実績があり、ソフトPVC製アイテムにおいては、他の追随を許さない高い開発力を持っている。
今回 「AWA」で使用されたソフトPVCは、厚さ0.15ミリという薄いシート。透明度が高く、柔軟性があって加工しやすいという特徴があるが、ムホーが目を付けたのは、裁断した断面の 「小口」部分であった。
七夕飾りを作るような要領で、幅1 センチのソフトPVCの帯状シートを溶着してつなぎ、ハニカム構造の柄を作成。A4サイズ程度のパーツをひとつのモジュールとし、パーツをさらに溶着。接着部分はビニルが溶け合い、美しいカラーグラデーションができるというわけだ。
ムホーの類い稀なるカラーセンスと 「小口」を見せるという斬新な着眼点が、ソフトPVCの新しい未来への扉を開いたのだ。
制作過程を見学。
様々な素材が並ぶ。
1990年代からは安全性を考慮した研究開発が進み、高品質なソフトPVCが生産されるようになった。
「弾力があり柔らかい」、「透明感があって発色が良い」という特徴にフォーカスして、開発を進める。
高周波ウェルダーによる溶着。
0.15mmの薄いシートを溶着し、ハニカム構造を作る。
美しい色のグラデーションを目指して調整中。
株式会社三洋SANYO
1947年創業。塩化ビニル、合成樹脂に関する製品の企画から開発、加工、販売に至るまでの事業を高品質な製品展開を重視する技術力と顧客や社会に貢献する独創的な視点にて展開。長年に亘って蓄積された汎用樹脂についての独自のノウハウとネットワークを活用し、素材のリーディング企業として幅広い分野に於いて注目を集めている。
エマニュエル・ムホーEmmanuelle Moureaux
建築家 2003年、東京に 「エマニュエル一級建築士設計事務所」を設立。日本古来のデザインを現代にも活かしたいという想いから、伝統的な間仕切りにヒントを得た色とりどりの 「色切/shikiri」を編み出す。その 「空間で色を仕切る」というコンセプトから、色を三次元空間を形作る道具として扱い、建築、インテリアデザインなど幅広く手掛ける。
R&D 田渕智也Tomoya Tabuchi
1974 年、栃木県生まれ。桑沢デザイン研究所を卒業後、家具メーカー入社。
インハウス・デザイナーとして、企画、デザイン、商品開発を担当する。
2010年、office for creationを設立。フリーランスで活動を開始。
家具などのプロダクトデザインを中心に、グラフィックデザインやアート・ディレクションも手掛けている。