フランス人のインダストリアルデザイナー、サミー・リオ氏と、日本人のプロダクトデザイナー、藤城成貴氏が、職人とコミュニケーションを重ねながら、「竹」を生かした新しい発想の実践に取り組みました。

サミー・リオ、藤城成貴

Bell
デザイン:サミー・リオ
製作:コジマチカラ
サミー・リオ氏が幼い頃に過ごしたアンデューズという町には竹林が広がる公園があり、彼にとって竹は身近な存在でしたが、やがて、竹はヨーロッパでは珍しいものなのだと知ります。インダストリアルデザインを学んだリオ氏は、自分が向き合うべき素材として竹を選び、日本や台湾、ベトナムなど、竹が広く使われている国でのリサーチを重ねながら、現代の生活で需要のある用途をもつプロダクトに竹を生かすデザインに取り組んでいます。今回彼がデザインするのは、持ち運びが簡単で気軽に使える照明。竹の軽さと編組の美しさを生かせると考えました。製作するのは、大分県別府を拠点に、編組の竹を異素材と組み合わせたインテリア装飾や雑貨の提案など、竹の活用機会を広げるために積極的に活動するコジマチカラ氏。リオ氏のリサーチの蓄積とコジマ氏の経験の蓄積が一体になった照明ができました。

「ジャパンクリエイティブとコジマチカラ氏と共に開発したこれらのランプは、伝統的な竹の編組の職人技を引き出すとともにそこにスポットライトを当てます。日本の日用品の多くにみられる竹の編組は、質感と模様の中に強度と軽さをもたらします。この照明は、家のあちこちに置いたり吊るしたりできる小さな光の鐘です。必要とされているところに設置できる軽量さと頑丈さを兼ね備えています。」

[サミー・リオ氏 プロフィール]
フランス人の新進気鋭のデザイナー。工芸と産業を組み合わせることで、質の拡大だけでなく、自身が開発する持続可能な製品の管理レベルをキープすることを目指す。一般的には対極と見做される生産様式の間の中間的な道を行くことで、特にヨーロッパという背景にあっては、ともすれば職人的な伝統から抜け出せなくなりがちな才能ある若者を大量生産にも取り組むことによって、再活性させることができる。リオは、家具職人としての基礎訓練と最新の技術とを用いて、どのようにすればこの新しいハイブリッドなアプローチを継続できるかを明らかにしようとしている。

[コジマチカラ氏 プロフィール]
演奏家・竹工芸家。大分県立芸術文化短期大学、大分竹立竹工芸訓練センター卒業。竹工芸訓練センター在籍時より竹藝家jiro yonezawaに師事。現在、演奏活動と竹工芸を中心に活動するハイブリッドアーティストとして多方面で活動している。

heat-bent bamboo basket  (NAMI, MOCHI, MAGE)
デザイン:藤城成貴
製作:東浩章
藤城成貴氏にとって、竹を素材とするデザインに取り組むのは初めてのことですが、彼には当初から、竹を「曲げる」加工を駆使して成形するバスケットのイメージがありました。藤城氏はまず、自分で竹と鉈を調達して、竹を曲げる加工を試し、その難しさを実感しました。イメージする構造とフォルムを具現化することができそうな人を探した末、東浩章氏にたどり着きます。東氏が手掛けた、竹ひごを6cm間隔のグリッドで編んだモダンな籠を目にしたとき、「この人だ」と確信したのです。竹の調達から自分でできる環境を求めた東氏は、現在は熊本県の山間の村で、近所から譲り受ける古い竹籠を参照しながら黙々と制作を続けています。一般的な加工技術ではかなわない藤城氏のアイデアが、研ぎ澄まされた感覚から生まれる東氏の創意工夫によって、具現化されました。

「床に置いて使用する3種類の竹籠をデザインしました。竹籠というと、竹のしなりを活かした編組によるものが一般的ですが、敢えて編組には拘らず、格子状に組む手法を選びました。また、竹籠にはほぼ用いられることのない40ミリという幅広の材料を利用することで、少しモダンな様相を意識しています。竹細工職人の東氏の作業場を訪れた際にみた、熱による曲げ加工と、竹の板を横向きにカーブさせる『柾割り』という技法に着目し、従来の竹細工とは別の視点で、その技の活用法を見出し、デザインに取り込みました。」

NAMI

MAGE

MOCHI

NAMI

MAGE

MOCHI

[藤城成貴氏 プロフィール]
株式会社イデーのデザイナーを経て、2005 年に自身のスタジオ「shigeki fujishiro design」を設立。インテリアプロダクトを主軸に活動を行なっている。エルメス、アディダス、カンペール、有田焼のブランド「2016/」といったブランドとのコラボレーションをする一方、自身でプロダクトの企画、生産、販売まで行なっている。近年の活動としてはデンマークのテキスタイルブランド KVADRAT 社による「Knit!」や多治見の焼き物プロジェクト「MINO SOIL」といったプロジェクトに参加している。
http://shigekifujishiro.com/

[東浩章氏 プロフィール]
1984年生まれ。2009年、慶應義塾大学政策メディア研究科環境デザインガバンナンス修了。2012年に竹のカトラリーの制作を始める。2015年、大分県立竹工芸訓練センター修了後、ヒガシ竹工所を設立。現在は熊本県山都町にて制作を行っている。